赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


翌日の午前中、いつも通りアポなしで訪ねてきた麻里奈ちゃんはいつにも増して不貞腐れた顔をしていた。

最近は仲良く普通に会話できる日も増えていたのにな、と思いながらもキッチンに向かうと、麻里奈ちゃんも後ろをついてくる。

「クッキーでも作ろうかと思って、キッチン借りてもいいか滝さんにお願いしたの。麻里奈ちゃんも一緒に作る?」

桧山家に来る前は、家事は普通にしていた。特にお菓子作りは楽しくて、上手にできた時には匡さんにどうしても食べてほしくて、帰りに寄れないかとメッセージを送ったものだ。

匡さんは甘い物はあまり好まないのに、誘えばほとんど来てくれて、作ったお菓子を食べてくれた。

そんな呼び出しの後日には決まってお礼にと有名店のお菓子を手土産に持ってきてくれたのだけれど、あれは純粋に言葉通りお礼ととってよかったのか、これを見本として精進しろという意味合いが込められていたのか未だに謎だ。

「え、自分で作るの? 作ってみたい!」
「じゃあ一緒に作ろう。ひとりで作るより楽しいし、私も嬉しい」

エプロンを渡しながら言うと、麻里奈ちゃんは一転はしゃいだような笑顔を浮かべて腕まくりをした。


「これ、これから膨らむの?」

麻里奈ちゃんがオーブンに入れたクッキーの生地を見ながら聞く。


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