赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「少しは膨らむけど、大きさはそこまで変わらないよ。マフィンとかとは違うから」
「ふーん」
「……そんなに張り付いて見張ってなくても大丈夫だよ」

オーブン前で腰を折り覗き込むようにしている様子に言うと、麻里奈ちゃんは「わかってるし」と口を尖らせる。

それでもチラチラと生地の具合を見ているのが可愛くて、こっそり笑みをこぼしながら、洗い終わったボウルや泡だて器を水切りに置く。

麻里奈ちゃんと一緒にいると、第二希望の夢だった保育士願望がたっぷりと満たされていくのを感じる……なんて本人には絶対に言えないけれど。

匡さんは面倒くさそうな顔をするものの、私は麻里奈ちゃんの相手をするのはとても楽しく感じている。

好意にも悪意にも裏がなく素直で、そして自己肯定感が強く常に前向きな彼女といると、こちらまで元気になってくるというものだ。
パワフルな人間は見ていてとても気持ちがいい。

そういえば、私の父もそういうタイプだったといつか母から聞いた覚えがある。

いつも前向きで明るく、周りを朗らかな気持ちにさせてくれる人だったと。
私はそういう部分は母にも感じているので、きっと似たもの夫婦だったのだろう。


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