赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「本来なら、高校卒業と同時に結婚しようと考えていたのに、大学に進学したいと言い出したときには頭を抱えたが、調べてみても美織の周りには男の影はなかったし、美織にも思うところがあるのだろうとも思い受け入れた」
匡さんは私を見て続ける。
「それでも、俺にも限界はある。大学の卒業式に迎えに行ったのは、一刻も早く結婚したかったからだし、式の日取りを勝手に決めて進めていたのも、美織の退路を断つためだった」
話しているのは結構強引なウエディングプランなのに、少しだけ不貞腐れているような顔の匡さんに胸がキュンとする。
まるで、自分が悪いとわかっているのにそれが言い出せない子どものように見えて、抱き締めたくて堪らない衝動を必死に我慢した。
「美織が気付かないうちに外堀を埋めていくのは卑怯な手段だったとも思う。けれど、俺にはそういうやり方しか、美織をずっと隣に置く方法が思いつかなかった」
ああ、もう。
匡さんはずるい。
顔だって声だって、匡さんのどこをとっても全部がカッコよくて魅力的なのに、更に可愛さまで持ち合わせているなんて、ずるい。
頭がいいのに、そんな形でしか私を繋ぎとめられないと思っていたことも、私が心変わりしたかもしれないと不安になっていたことも、全部が可愛い。
素直な気持ちを言えずにいる麻里奈ちゃんとどこか似ている今の匡さんに、自然と頬が緩んでいた。
ここは、私が折れる。というか、匡さんの気持ちがわかった以上、今度いつだって私が折れて負けでいい。もう、大人っぽさなんていらないし、誰とも自分を比べない。
だって匡さんは、私をちゃんと好きでいてくれているのだから。
それが、声にしてもらわなくとも、伝わってくるから……だから、いい。