赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「私の気持ちが変わったと思っていたなんて、ひどいです」

微笑んで言うと、匡さんはやや難しい顔をして目を伏せた。

「狭く暗い世界にいたとして誰かが手を差し出し明るい場所に連れ出してくれれば、その人間に少なからず好意は持つ。美織の場合は、年上の男に惹かれやすい年齢でもあった。それだけの話だ。だから高校大学と新しい世界を知って他の男に惹かれる可能性は十分にある」
「ありません」

強く言い切ってから「私がないって言うんだから、ないんです」と続けた。

「私は生まれてから今まで、一度だって心変わりしたことなんてありません。ずっと匡さんだけが好きだったし、匡さんのお嫁さんになるのが一番の夢でした」

それから、高校二年生の夏前に、匡さんが沢井さんとふたりでいるところを見かけたのをきっかけに、匡さんに見合う女性になりたいと思って、態度を改めたこと。

好きだと簡単に声にするのは子どもっぽいと思いやめたこと。

でも実際は、胸に秘めていただけで今だってこれまでだって、ずっと大好きだったことを伝えると、匡さんは驚いた顔をした後、気が抜けたように笑った。


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