赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「それが事実なら、本当に美織には振り回されっぱなしだな」
「私だって匡さんには振り回されてます。……でも、今日からはまた、我慢しないで好きって伝えようと思います。だから匡さんも、いつか好きだって返してくださいね」
今までの会話で、匡さんが〝好き〟という言葉を避けていたのは気付いていた。
私を想ってくれていたと伝わるようなことは言ってくれたけれど、明確な気持ちは言ってくれていない。
だからそこを指摘すると、匡さんはやや困ったように眉を寄せた。
「今までの会話で、俺の気持ちはわかっただろ」
「それは、はい」
「今後もその気持ちが変わることはないし、俺には美織以外考えられない。……それだけわかっていれば十分だろう」
そこまで聞いて、あれ?と思った。
「もしかして、恥ずかしかったりしま……」
「そうじゃない」
私の声にかぶさるほどの速さで否定され、確信した。
なんだ。匡さんは直接声にするのが恥ずかしかったのか。
そうわかった途端、今までの要所要所でもしかしたら言おうとしてくれていたりしたのかなだとか、でも恥ずかしくて誰にも知られることなくひとりで断念したりしていたのかなと思えてきてしまい、これまでの少し乾いて感じていた新婚生活まで愛しくなってくるのだから不思議だった。
キスだってとろけそうなほどに上手で、ベッドの上でだっていつも私を翻弄しっぱなしなのに、たったひと言が恥ずかしくて言えないなんて可愛い以外の何物でもない。
だから思わずにやけていると、バツが悪そうな顔をした匡さんがおもむろにシュークリームを私の口の中に押し込んでくる。
完全に私を黙らせるための所業だった。