赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
匡さんが調べてくれた産婦人科は家から少し離れた場所にあった。
決め手は、評判の良さや建物の新しさなど色々あったけれど、一番は私が希望した女性の先生しかいないという点だった。
分娩台でどんな格好をするのかは情報として知っていたので、あれをいくら医師と言えど男性の前でするのは私にはハードルが高いと思った。
もちろん、匡さんだろうと絶対に嫌だ。
まだ先の話だけれど、立ち合いも絶対にしてほしくない。
今まで散々情けない部分も恥ずかしい部分も見られているとは言え、匡さんにはきっと壮絶になるであろう私の出産シーンは見て欲しくない。
同じ理由で、診察室にも入ってほしくなかったため、匡さんは待合室で待機中だ。
「おめでとうございます。ご懐妊ですね。子宮のなかに見えるこれが胎嚢です。赤ちゃんができる袋ですね」
エコー写真を見ながら言われ、じわじわと実感が湧いてきた。
今までは生理が遅れてるし心当たりもあるからおそらく……程度だったけれど、こうしてはっきりと写真で出されるとそれまで不明瞭だったものが一気に現実を帯びる。
実感と責任感が一気に湧き、背中を力強く叩かれた気分だった。
走り出したくなる気持ちを必死に抑え、ゆっくりと待合室に戻るとすぐに匡さんが立ち上がる。
エコー写真を見せた途端に言葉を失った匡さんを見て、診察室では出なかった涙がうっかりこぼれそうになってしまったのだった。