赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



『そう。おめでとう、美織』

産婦人科からの帰る車中で母にテレビ電話で妊娠を知らせる。
にっこりと微笑んだ母は『私もおばあちゃんかぁ』と感慨深そうに呟いたあと、続けた。

中途半端な帰省のせいで心配をかけてしまったことも謝ったけれど、母は『しっかり向き合えたならよかった』と優しく言うだけで、私を怒ったりはしなかった。

『妊娠は病気じゃないって言っても、ツラい時期がある人も大勢いるの。調子がよければ好きに動き回ればいいけど、苦しかったり違和感があったら絶対に無理しちゃダメ。自分の体のこと、毎日しっかり把握して匡くんにも知らせるのよ。もちろん、お母さんもできる限りの手助けはするけど、基本的には夫婦で乗り越えなくちゃね』
「うん。ありがとう」

温かい激励を受け、笑顔を返し電話を切った後、チラッと運転席を見る。

ハンドルを握る匡さんの横顔が心なしが浮かれているように見えるのは気のせいではないと思う。

匡さんは最初から避妊をしなかったし、少なからず子どもを望んでいたのだろう。
だから「赤ちゃん、嬉しいですか?」と聞いてみたのだけれど、聞き方が引っかかったらしい。

匡さんは「ああ、もちろん」と答えた後、「どういう意味で聞いている」と横目でこちらを見て聞き返した。


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