ママの手料理 Ⅲ
俺達をまとめる立場にあるはずの湊は明後日の盗みと自分の両親の事で頭がいっぱいみたいだし、他の奴らはそんな2人に関して見て見ぬ振りを決め込んでいる。
「チッ…めんどくせぇ」
小さく舌打ちをした俺は、もう一度クロワッサンを口に運びながら、視線を他の客の方へ向けた。
そのままこの食堂に訪れる人々を観察していくうちに、俺は彼らが持つ共通点に気づいた。
それは、彼らが幸せに満ち溢れているという事である。
見るからに金持ちそうな2人組の紳士、その後ろから入ってくるのは両親と、その2人の間で手を繋いで幸せそうに笑う子供。
シェフが丹精込めて作ったであろうケーキを口の周りに付けながら食べる小さな子供を見て、写真を撮りながら楽しげに笑う大人達。
親戚が集まっているのだろうか、他の席では見た事がない程大きくてふわふわで美味しそうなサンドイッチを食べながら、子供も大人も笑顔で何かについて語り合っている。
…どれも、自分が幼少期にやりたかった事ばかり。
俺は、思わず下唇を噛み締めた。
小さい頃、俺は信じられない程貧乏だった。
1番下の弟が生まれてすぐ父親は俺達を置いて逃げ、母親はそのストレスと重圧に耐え切れなくなって精神を病んだ。
「チッ…めんどくせぇ」
小さく舌打ちをした俺は、もう一度クロワッサンを口に運びながら、視線を他の客の方へ向けた。
そのままこの食堂に訪れる人々を観察していくうちに、俺は彼らが持つ共通点に気づいた。
それは、彼らが幸せに満ち溢れているという事である。
見るからに金持ちそうな2人組の紳士、その後ろから入ってくるのは両親と、その2人の間で手を繋いで幸せそうに笑う子供。
シェフが丹精込めて作ったであろうケーキを口の周りに付けながら食べる小さな子供を見て、写真を撮りながら楽しげに笑う大人達。
親戚が集まっているのだろうか、他の席では見た事がない程大きくてふわふわで美味しそうなサンドイッチを食べながら、子供も大人も笑顔で何かについて語り合っている。
…どれも、自分が幼少期にやりたかった事ばかり。
俺は、思わず下唇を噛み締めた。
小さい頃、俺は信じられない程貧乏だった。
1番下の弟が生まれてすぐ父親は俺達を置いて逃げ、母親はそのストレスと重圧に耐え切れなくなって精神を病んだ。