ママの手料理 Ⅲ
子供達の中で最年長だった俺は、まだ6歳なのに必死で家事を手伝った。


部屋の隅で縮こまって動かない母親の代わりに家の事は全てやり、兄妹達が泣いたらあやして、お腹がすいたと言えば家にあるものでご飯を作る。


料理の仕方なんて良く分からなかったけれど、取り敢えず火にかけておけば全部食べれたからそれで良かった。


包丁で指を切ったのも火傷したのも数しれない。


自分以外の家族には健康でいて欲しいと飯を与え、自分は皆が食べ終わった後に生ゴミを食べて生活していた。


だって、もし俺が何か食べたら兄妹達の分が無くなってしまうから。


自分の家族が悲しんだり泣いたりする姿は見たくなくて、彼らが少しでも笑ってくれるならどんなに苦しくても我慢した。


卵の殻や生肉を食べたり、氷をかじって腹の足しにしたり。


調味料なら問題ないと思って、おやつ代わりにケチャップを指にすくいとって舐めたりもしていた。


服だって、何日も何日も同じものを着て我慢して。


世間というものを知らない俺は、皆そんな生活をしているものだと思っていた。


母親が死んで、兄弟と離ればなれにされてみらい養護園に引き取られるまでは。
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