ママの手料理 Ⅲ
「いっ……いやああああああああ!何これええぇぇえ!?」
大きな衝撃音と目の前にある黒い鉄格子のせいで思考が一瞬停止した私は、口を半開きにしたままよろよろと後ろに下がり、ありったけの大声で叫んだ。
(何何何何が起こってるの今、私どうなった?何がどうなってる!?)
余りにも気が動転しすぎて、まともにものを考えられない。
心臓が口から飛び出そうな程に激しく鳴っていて、ティアラを持つ手がカタカタ震える。
そのまま自分の足にもつれてその場に座り込んでしまった私は、立ち上がる気力もないまま周りを見渡した。
(何で、こんな事に………)
目の前には私の方に手を伸ばしてスライディングをしたその姿勢のまま固まっている湊さん、そんな私と彼の間には天井から降りてきたらしい黒い鉄格子があって、それは私を取り囲むように四方を覆っていた。
(…何これ、出る場所がないじゃん、)
どんなに首を回してみても、等間隔で縦に線が引かれた黒い物体の出口が見つからない。
(……………)
『それは罠だ!』
今更ながら、湊さんの叫び声が頭にこだまする。
(罠って、…こういう事、?)
それに気づいた瞬間、一瞬で顔から血の気が引いていくのが分かる。