ママの手料理 Ⅲ



「湊ー、ちゃんと全員分注文したー?俺のはクリーム増し増しだよ!」



と、私がぼんやりと今までの流れを回想していると、両手をぶんぶんと振り回した大也が部屋のドアを開け放って入ってきた。


「もちろん大丈夫だよ、後10分くらいで届くはずだから」


それに優しい笑みで答えるのは、ご丁寧にベッドメイキングをしていた湊さん。


「ねえ聞いてよ、まだ僕達の事がネットニュースのトップにあがってるんだけど。全日本国民が僕に注目する日が来るなんて、未だに信じられない気持ちだよ」


大也の後ろから満更でもなさそうな顔で姿を現したのは、先程まで1人でホラードラマを鑑賞していた仁さん。


キャラメル色の髪をかきあげ、フフン、とにやけるその美貌に対して、


「いや、お前は血糊使って死んだふりしただけだろうが。注目する価値すらねぇわ」


左手をギプスで吊る下げた琥珀が、トイレから出てきたそのままの流れでじろりと彼を一瞥してそう吐き捨てた。


(流石琥珀、ごもっとも…)


もし彼が同じ台詞を私にぶつけてきたら、正論過ぎてぐうの音も出ないだろう。


しかしながら、仁さんも負けてはいなかった。


「誰か、この無礼極まりない警察官を即刻この部屋から追放してくれないかな?こんな奴と同じ空間に居るなんて虫唾が走るんだけど」
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