ママの手料理 Ⅲ
「こちらは、当ホテルのシェフのおすすめメニューになっております。あちらにはディナービュッフェがございますので、お気軽にご利用下さい」
林堂さんの澄み渡る声を聞きつつ、私はお腹が鳴りそうなのを必死で堪え。
「それでは、ごゆっくりお召し上がり下さいませ」
そう言って彼女が立ち去った瞬間、
「いただきます!」
私は光の速さで手を合わせ、自分の料理にいそいそと手をつけた。
家族皆で食卓を囲み、どのくらいの時間が経っただろうか。
「…吉良様とジェームズ様がいらっしゃいました」
いつの間にか私達のテーブルに来ていた林堂さんの声で、私達は話すのをやめて食堂の入り口の方に目を向けた。
「…あれか?」
宿泊客が行き来する中、目的の人を見つけたらしい琥珀が、礼儀作法を完全に無視して人差し指でその人達を指さした。
「あれこそ、大金持ちの代名詞じゃん…」
その姿を捉えた私は、思わずフォークを取り落としかけながら呟き。
「「ジェームズ!」」
向かいの席に座っていた仁さんと大也が、勢い良く立ち上がってその人の名を大声で呼んだ。
食堂の入り口に立ち、今まさにこちらに向かって歩みを進めているのは、黒スーツに蝶ネクタイをつけ、眼鏡をかけたいかにも紳士的な男性と、黒と白の綺麗なワンピースを身にまとった美しい女性。
林堂さんの澄み渡る声を聞きつつ、私はお腹が鳴りそうなのを必死で堪え。
「それでは、ごゆっくりお召し上がり下さいませ」
そう言って彼女が立ち去った瞬間、
「いただきます!」
私は光の速さで手を合わせ、自分の料理にいそいそと手をつけた。
家族皆で食卓を囲み、どのくらいの時間が経っただろうか。
「…吉良様とジェームズ様がいらっしゃいました」
いつの間にか私達のテーブルに来ていた林堂さんの声で、私達は話すのをやめて食堂の入り口の方に目を向けた。
「…あれか?」
宿泊客が行き来する中、目的の人を見つけたらしい琥珀が、礼儀作法を完全に無視して人差し指でその人達を指さした。
「あれこそ、大金持ちの代名詞じゃん…」
その姿を捉えた私は、思わずフォークを取り落としかけながら呟き。
「「ジェームズ!」」
向かいの席に座っていた仁さんと大也が、勢い良く立ち上がってその人の名を大声で呼んだ。
食堂の入り口に立ち、今まさにこちらに向かって歩みを進めているのは、黒スーツに蝶ネクタイをつけ、眼鏡をかけたいかにも紳士的な男性と、黒と白の綺麗なワンピースを身にまとった美しい女性。