ママの手料理 Ⅲ
「まあいい、建物の説明に移る。今回攻める建物は表向きは貿易関係のビルで、高さは45階建て。1階から3階は……いちいち言うのめんどくせぇから端折るわ。とにかく、目的のティアラは最上階に保管されてるから、お前らは最上階だけを目指して駆け上がれ」


(45階建て……、)


その途方もない数字に驚愕したのは、私だけではなかった。


「それ、最上階まで階段で行けなんて言いませんよね?筋肉痛になるの嫌ですよ」


「エレベーター壊れたらどうしよう…いや壊れる前提で考えないとだよね…」


航海はぶんぶんと首を振り、大也はエレベーターの悲しい未来を想像して溜め息をついている。


「エレベーターは外に面した全面ガラス張りのものが全部で12個あり、1階から20階まで行くのが6つ、20階から45階まで行くのが6つある。最初から45階に行くのもアリだが、もしエレベーター内に敵が侵入してきたら厄介だ」


「やだやだ、敵がエレベーターのガラス壊してそこから宙ぶらりんになって落っこちる未来しか見えないから、その作戦はなしにしよ!」


続け様に銀ちゃんが提案した事に対して、大也が露骨に顔をしかめて拒否をした。



その後しばしの沈黙が訪れ、私はソファーの上で膝を抱えて丸くなった。


今回の闘いは、過去に類を見ない程大きなものとなるだろう。
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