ママの手料理 Ⅲ
闘えない私に唯一出来る事は、全員無事に帰ってくるのを祈る事だけだ。



「んで、建物の内部に関してだが、これはハッキングしてみない事には何とも言えない。一応貿易会社を名乗ってるからそれ相応の造りにはなってるんだろうが、何せ侵入したFBIや私服警官は全員死んで帰ってきてるからな」


その後天才ハッカーがおもむろに口を開き、私は息を詰めてその話に耳を傾けていた。


「とにかく、建物の造りが当日までに分からなかったとしても、バリケードやパスワード系は俺に全部任せろ。お前らは、過去最大の敵に勝つ事だけを考えればいい。…いや、勝つのはもう決まってるか」


最後の彼の言葉は自分のチームに対する自信から出たものなのか、それとも無理にそう言う事によってチームのやる気ー殺る気ーを高めようとしたのか。


どちらにせよ、皆が笑顔で大きく頷いたのは確かだった。



「今の所はこんなもんだな。あと、何か追加があればスマホのグループで知らせる」


そう言い残し、彼がリーダーに発言権を返すと。


「ありがとう、銀河。…それで、盗みに行く時間帯はいつがいいかな?やっぱりお昼?」


いつの間にかお水をくみにキッチンへ移動していた湊さんが、私達の方を振り返りながら尋ねてきた。
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