ママの手料理 Ⅲ
「確かに連絡は取れなかったし、全然話す機会もなかったけどさ…家族って、こんなにも脆いんだって…浅い関係なのかなって、」


その目に見えない絆に疑問を抱くのも、不思議ではない。


「…俺、ジェームズのお陰で養護園を出れたんだよね…。ジェームズが居なかったら怪盗mirageにもなれてなくて、…だから、実は本当に感謝してて、」


この3年間、私は彼が養子縁組をしていた事も、ジェームズさんが居た事も知らなかった。


最初は言って欲しかったと残念に思っていたけれど、もしかしたら。


「受け入れるけど、さ……。あー、やっぱ悲しいなぁ…」


私に伝えるのを忘れてしまうくらい、彼らにとってはそれが当たり前の事だったのかもしれない。



グスン、と隣で鼻をすすった大也の横顔は、何年経っても昔のままだった。


あの日公園で泣いていた時のように、脆くて儚くて。


今日1日、あんなに元気そうに笑っていた裏で、彼は無理をしていたのだろう。



「…ジェームズさんの事、本当に信頼してたんだね」


ジェームズさんと私は昨日挨拶程度に言葉を交わしただけだから、相手の性格は良く分からない。


それでも、大也のこの悲しみ方を見る限り、ジェームズさんはとても良い性格の持ち主なのだろう。
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