ママの手料理 Ⅲ
「あ、紫苑ちゃんこんな所にいたの?何してるのさ、探しちゃったよ帰ろう」
その後、私が泣き止んだ大也としばらく話していると、いきなり部屋のドアが開いて仁さんが姿を見せた。
彼は他の部屋も覗き回っていたようで、私の姿を見つけて疲れた顔を浮かべている。
「紫苑ちゃんに一番風呂譲ろうと思って待ってたのに、全然帰ってこないんだから!何してるのかと思ったら大也とイチャイチャ?全く、大也も幸せ者だねぇ」
「黙れようるさい」
ベッドの上に座ったまま、私の隣にいる大也が低い声を出す。
「イチャイチャって何?俺らがどんな関係だと思ってんだか知らないけどさ、このご時世でそういう先入観持ってんのほんとキツいよ」
「いつまで経っても僕にムキになって突っかかるなんて、大也もまだまだお子様だね?ん?」
静かな低い声を出す大也と、わざとらしいまでの明るい声で攻撃をかわす仁さん。
ああ、どうしてこの2人はいつもこうなのだ。
部屋分けの時にこの2人が同部屋にならなくて、内心一安心していたのに。
「ちょっと2人共ストップ!じゃあ大也また明日ね、仁さん戻りましょう」
嫌な雰囲気が部屋中をたちこめ始めたのを察した私は、ベッドから降りて仁さんの腕を引っ張った。