ママの手料理 Ⅲ
「そうです。あの、私がシャワーを浴びてる間に皆は先に行っちゃったみたいで、」


姿勢を正して説明すると、


「なるほど、そうでしたか。…それにしても、置いてきぼりになるのは悲しいですね」


湊も気配りをすればいいのに…、と、湊パパは肩をすくめてみせた。


「いやいや、今回のは全然…!湊さんはいつも優しくて頼りがいがあって、とても格好良いリーダーなんですよ!」


湊さんのご両親は、湊さんの専属執事であるジェームズさんが私達に依頼した内容も把握しているはず。


2人が普段の湊さんを何処まで知っているか分からないから、とにかくリーダーを褒め称えると。


「そうでしたか、それは良かった。…あ、エレベーターが来ましたよ」


ふわりと笑った湊パパは、私の背後を手で示した。



そのまま私達3人が乗り込んだエレベーターは、英語のアナウンスを響かせながら静かに下へと降りて行く。


「…それでは、湊によろしくお伝え下さい。私達のテーブルは別ですので」


静かな長方形の空間で、不意に湊パパが口を開いた。


その良く通る声に反応し、私は声の主を見上げる。


「はい。…あの、一緒に座らなくていいんですか?」


(折角皆が揃ったんなら、家族水入らずの時間を過ごしたいはずだし…)
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