ママの手料理 Ⅲ
私や他の人達は別のテーブルに移動する事も出来るから、折角なら3人で…、と口を開きかけたのに。


「いえ、私達にはお構いなく。そちらも色々やる事があるのでしょう?またゆっくりお話しましょうね」


湊パパの隣に立つ湊さんのお母さんー湊ママと呼ぶ事にするーにやんわりと断られ、私は口を引き結んで頷く事しか出来なかった。



「では。ごきげんよう」


「あ、さようなら…」


食堂に着き、私達はすぐに左右に別れて歩き始めた。


2人は仲睦まじい夫婦そのもので、自然と腕を組んでこちらを振り返る事なくテーブルの方に向かっている。


私が行く先には、自分達の愛息子が居るというのに。


(湊さんと仲悪いのかな…いや、そんなわけないよね…)


何とも言えない思いを抱えたまま、


「皆おはようー!遅れてごめん、私の朝ご飯どこー?」


私は、笑顔で家族の待つテーブルへ駆けて行った。



湊さんに彼のご両親と鉢合わせした事を伝えられないまま、私の優雅な朝食の時間は過ぎて行った。







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「おい、そんなにケチャップ買ってどうすんだ」


「どうすると思う?君の小さな脳みそを最大限に使って当ててみなよ」



ここは、ホテルから徒歩10分の距離にある大きなスーパーマーケット。
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