没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
濃く深い極上の赤みをしているので、ピジョンブラッドに間違いない。

「鑑定させてください!」

たちまち興奮するオデットにジェラールはニッと口角を上げた。

「もちろんだよ。ただしこれは君へのプレゼントだから、鑑定するだけじゃなく身に着けてほしい」

「ええっ!?」
パッと見た限りルビーは五カラットほどもありそうで、小粒ダイヤを合わせたら一千五百万ゼニーは超えそうだ。

抱きつかれた時より驚くオデットに、ジェラールがサラリと言う。

「ほら、先月グスマン伯爵邸を訪問した際に、夫人がピジョンブラッドの指輪をしていただろう。オデットが目を輝かせていたから宝石商に注文しておいたんだ」

たしかにグスマン伯爵夫人の指輪に興奮したけれど、鑑定欲が湧き上がっただけで欲しかったわけじゃない。

ジェラールが仕事用のエプロンにブローチをつけようとするから、慌てたオデットはその手を両手で握って阻止した。

「待ってください。高価なジュエリーはいただけません。すでにダイヤのネックレスもいただいているのに、これ以上は――」

「オデットのために作らせたんだよ。受け取って」

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