没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
(よくわからないけど、今すぐお城に戻らないといけない雰囲気ね。デートができなくて残念だわ)

眉尻を下げてがっかりすると、カディオに厳しい視線を向けられた。

「いい機会ですので、あなたにも忠告しておきましょう。平民の分際で夢を見ないように」

「そんな言い方はよせ!」

ジェラールが焦ったように近侍を咎めたが、当のオデットはポカンとして少しもダメージを受けていない。

(どういう意味かしら。貴族も平民も、寝たら誰だって夢を見るものなのに)

とんちんかんな疑問はひとまず置いといて、先に誤解を解こうと口を開いた。

「王太子殿下のお付きの、ええと……」

「カディオです」

「カディオさん、お久しぶりです。あの、私の実家は落ちぶれて貧乏なので仕送りしていますけど、一応貴族です」

「は?」

ジェラールとカディオが揃って素っ頓狂な声をあげるので、オデットまで驚いた。

(そんなに意外かしら?)

眉間に皺を刻んだジェラールが、勢いよくオデットの肩を掴む。

「なぜ隠していた?」

「隠してはいません。誰にも身分を尋ねられたことがありませんし、お話しする機会がなかったので……」

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