没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
頷いたリリアは、ロイが不貞腐れた態度なのでオデットに差し出した。

「開けていい?」

「はい」

リリアをテーブルへと誘導しながらオデットが紙袋を開けると、出てきたのは三個のシュークリームだった。

「あの、壊れたイヤリングをロイくんが直してくれたんです。すごく嬉しくて、お母さんに教えてもらってシュークリームを……あっ」

テーブルの上の大きなバスケットには、たくさんのシュークリームが入っている。

それに気づいてリリアが固まった。

同じものを持ってきてしまっただけでなく、プロのルネが作ったものだから見た目が美しい。

表面はサクッとして中はふんわり。

カスタードと生クリームの二層を挟んでいて、白鳥の形をした芸術的なものまである。

リリアのシュークリームは不格好で、頑張って初めて作ったという感じがした。

ルネが慌ててバスケットの蓋を閉めたが、もう遅い。

「ごめんなさい……」

悲しそうなリリアは椅子に座ることなくしょんぼりと肩を落とし、出ていこうとしている。

それを止めたのはロイだ。

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