没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
「ロイを見ていると弟を思い出すの。雰囲気が似ているからかしら。実家を出た時はよちよち歩きだったけど、今は走り回っているって母の手紙に書いてあったわ。リュカに会いたい」

幼い弟が恋しくなって、思わずロイの頭を胸に抱きしめた。

ロイは喜ぶより三歳児と一緒にされてショックを受けており、皆に紅茶を配るルネがおかしそうに笑った。

「ロイが気の毒だけど面白いからオデットはこのままでいいよね」

ブルノはやれやれと言いたげに紅茶を口にし、それから新聞を読み始める。

「前代未聞の甘い判決か。フムフム、たしかにそうだな」

「おじさん、なんの記事?」

ルネが興味を持つと、ブルノが皆に見えるよう紙面を広げた。

「オデットが解決した例のブローチの件だよ」

王城に呼ばれ、エメラルドのブローチにかけられていた呪いを見破ったのはひと月ほど前になる。

その後に関してはなにも知らないので、オデットも気になって紙面を覗き込んだ。

ジェラールにブローチを贈ったヨデル伯爵は捕らえられて自分の単独犯行だと自供し、裁判にかけられたらしい。

そして下されたのは禁固二十年の有期刑。

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