没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
「こうすれば暖かいよ。もう雪に喜ぶような子供ではないが、オデットの温もりを感じられるから冬を歓迎しよう。こんな風に思わせてくれる君が誰より愛しい」

繋いだ手は頼もしく、眼差しは優しく少し艶めいて、オデットの鼓動がたちまち高鳴った。

(手袋を忘れてきてよかった……)

「私も、殿下が愛しいです」

恥ずかしいので小声で伝えたら、ジェラールがフッと笑む。

「ふたりきりの時はジェラールと呼んで。もっとオデットとの距離を縮めたい」

「は、はい」

照れくさいけれど、彼が望むならと勇気を出して、オデットは初めてその名を口にする。

「ジェラール様」

たちまち顔に熱が集中し、頬にあたる雪が一瞬で蒸発するのではないかと思うほどである。

「もう一度」

「ジェラール、様……」

「そんなに照れないでよ。キスを我慢するのが大変だ」

クスクスと笑っているので冗談かもしれないが、瞳は蠱惑的に弧を描いてオデットのときめきを加速させる。

このままではのぼせてしまいそうでポケットから手を引き抜こうとしたが、強く握られて阻止された。

「離さないよ。絶対に」

今度は囁かれた耳が熱くなる。

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