春恋
春恋
解けない
ずーっと考えてるのに

「もう潮時かなー」

だいたい私、羽島睦月(はしまむつき)は諦めるのが早い。
今まで30年生きてきて恋も進路も仕事も諦めてきた。

(考えたって時間の無駄)

それが私の哲学みたいな物。
諦めたからと言って後悔した事ないんだから大して重みのない事ばかりだったんだろう。


「また諦めるんですか?」


不意に掛けられた背後からの声に反応して携帯を裏返した。


「オーナー背後からは急に声掛けるのやめて下さいよー」


クルッと椅子のまま回転するとオーナーの如月蒼(きさらぎそう)が立っていた。


優しく微笑む彼の事は私は苦手だ。

前髪長めのサラサラな黒髪の隙間から見える少し下がった二重に綺麗な鼻筋。

どこからどう見てもイケメン男子。
お店を経営してる26歳のオーナーなんて毎日キラキラしてるに違いない。


(まあ僻みでもあるけど)


「すみません。灯りが見えたんで」


外は大雨で私は小降りになるまで店のカウンターで時間潰しをしてた。
オーナー越しの入口を見るけどまだ雨は土砂降りで帰れそうもない。
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