あなたが社長だなんて気が付かなかった〜一夜で宿したこの子は私だけのものです〜

妊娠

このところ夏バテなのか食欲がない。
大好きだったコーヒーも美味しく感じない

豆を変えてみても何かが違う。
甘いものも見ただけで気持ちが悪くなりどうしても受けつけない。
最初こそ夏バテだと思おうとしていたが段々とそう言っていられないと思わざるを得なくなってきた。

毎月あるべきものがない。
そう気がついてしまったから。
ストレスから遅れているんだと思いたいが既に2週間きていない。

元彼とは半年くらい前に関係を持ったのが最後。
考えられるとしたらあの結婚式の後の……。

悩んでいても仕方がないが調べないわけにはいかないのは分かっている。
でも独身の私がドラッグストアでこれを買うのはとても勇気がいることでなかなか手に取ることができない。

会社の誰にも会わない、でも家からも少しだけ離れたところでやっと手に取ることができた。

家に帰りすぐにトイレに行き検査をしてみる。
5分待つように書いてあるがそんなに待つことなくすぐに小窓に赤いラインが2本浮き出てきた。

やはりという気持ちと、まさかという気持ちが入り混じる。
トイレの中で立ち上がることができず途方に暮れた。
どれだけここにいたのだろう。
私はやっと立ち上がりリビングのソファに腰掛けた。

あぁ……
妊娠しちゃった。
相手はあの人に間違いないけれど名前さえわからない。
産む?
産まない?

父親もわからない人の子供を産むことに悩んでしまう。
目を閉じると今でも彼の表情や言葉が思い出される。たった3時間だったけれど彼の仕草や思いやりが胸を熱くする。

もし本当に妊娠していたら産みたい。
落ち着いて考えれば考えるほどにそう思えてならなかった。

父親の名前もわからない子供を産むことが子供にとっていいことだとは思えない。
けれど彼からもらったプレゼントのように思えて仕方なかった。

大切にしたいと思った。
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