あの夜を閉じ込めて
「ゆ、雪国の人って、こんなに大変な作業をしてるんですか?」
「そうですよ。朝一の雪かきは当たり前。大雪が降れば半日かけて道を作り、翌日にはまたそれが埋まってるから、またかき直しなんてザラです。まあ、住んでれば慣れてしまいますけどね」
私よりも何倍も多い雪を、冬夜さんは軽々と投げ続けていた。
彼の黒髪がだんだんと白く染まっている。ガラス作りも雪かきも、冬夜さんにとっては当たり前の日常を送っているだけなんだろう。
もしもここを訪れなければ、私は冬夜さんには出会えなかった。そのくらい、私たちの過ごしている世界線は違う場所のように感じた。
「……冬夜さんは、おいくつなんですか?」
「三十です」
「お付き合いをしてる方はいらっしゃるんですか……?」
「それって、俺のこと口説いてます?」
「い、いえ、その、カッコいいから彼女のひとりやふたりいるんだろうなと思っただけで!」
私はなんてことを聞いてしまったんだろうと、慌てて言い訳をした。冬夜さんは「冗談ですよ」と、悪戯っぽく笑った。
「彼女のひとりやふたりどころか、付き合ってる人もいませんよ」
「そう、なんですね。意外です」
「普段は工房に引き込もっているんで出会いもありません。それにガラス工芸作家っていう職業もマイナーなので、女性側からすれば近寄りがたいんじゃないでしょうか」
「わ、私は素敵だと思います……!!」
勢いのままに、大きな声が出ていた。
たしかに口で説明されただけじゃイメージがつかない部分もあるだろうけど、私は直接冬夜さんからガラス作りを教えてもらった。その難しさや繊細さ。彼が作った作品の数々を見て、ため息がもれるほど素晴らしいと思った。
「ふっ、やっぱり俺、口説かれてる気がする」
冬夜さんがクスクスとしていた。