あの夜を閉じ込めて
うそ、冬夜さん……?
瞬間的に口を手で覆った。
個展の話は聞いていたけれど、日本橋で開かれてるなんて……。
個展は入場無料で時間は十八時まで。腕時計を確認したら、あと三十分しかなかった。考える時間も惜しくて、私は彼の個展に飛び込んだ。
真っ白な部屋に並べられた色とりどりのガラス。多彩な形をした置物や花瓶。上品な食器やグラス。およそ五十点が展示されてある作品の中で、息を呑むほど美しいものを見つけた。
それは壁に飾られた大きなステンドグラスのパネル。作品名はマリンスノー。
暗い色から徐々に青色に変わっていくグラデーションは、まさしく深い海のようで、透けたガラスに雪の結晶が散りばめられている。それはあの日の夜を閉じ込めたような作品だった。
滲んできた涙を拭う。すると、女性スタッフに声をかけられた。
「この作品、素敵ですよね。今回の個展のメイン作品なんですよ。冬夜先生のファンの方ですか?」
「え、いや、は、はい」
「昨日はいらっしゃってたんですが、今日は残念ながら来れないようで……」
「そう、なんですね」
……冬夜さん、昨日はいたんだ。
あわよくば会えたらよかったけれど、そんなに都合よくいくはずがない。彼の個展を見れただけで十分。私は冬夜さんの作品を胸に焼き付けて、外に出た。