あの夜を閉じ込めて


――『やっぱりこれが邪魔だな』

繰り返し、あの夜のことを思い出す。

『あ、ゆ、指輪。すみません、すぐ外します』

『いいよ。べつに。ただの嫉妬』

『今なら……あのオレンジの海に投げられそうです』

『本当に? じゃあ、有言実行』

『え、よ、洋服っ』

『もう散々見たからいいよ』

一緒に捨てた婚約指輪は、一瞬で溶けた。私の胸に重くのし掛かっていたものまで、消えたような気がした。

冬夜さん、冬夜さん、冬夜さん。

恋しい人の名前を心で叫ぶ。

< 25 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop