あの夜を閉じ込めて
なにを言っても、なにを伝えても、私の中にある言葉だけじゃ足りない。
世界でひとつのものを作り出す彼は、私にとっても世界でたったひとりの人。
「望美さん、会いたかった」
冬夜さんから強く抱きしめられると、また海の底にいるみたいに息がうまくできなくなった。
「わ、私も、私もですよ……っ」
二度と会えないと思っていたけれど、本当は会いたくて、たまらなかった。
「一緒に作ったグラス、早く取りに来て」
「はい、すぐ行きます」
「すぐ? そんなこと言っていいの? このまま連れ去るよ」
「ふふ、是非」
「じゃあ、もう離さない」
「一生離さないで」
もうあの夜を、心に閉じ込めなくていい。
溺れそうなほど深い夜は、きっとまたすぐにやって来る。
―fin―


