あの夜を閉じ込めて
――ブーブー、ブーブー……。
カバンの中で鳴っているスマホ。画面には知らない番号が表示されている。誰だろうと不思議に思いながら、おずおずと電話に出た。
『また黙っていなくなるのか?』
すぐに飛んできた声に、体が固まった。
忘れるはずがない。忘れたことなんてない。
これは、冬夜さんの声……。
「ど、どうして……?」
『バースデーグラスの送り状に番号を書いただろ』
「あ……」
『ずっとかけようと思ってたんだ。でもかけたら迷惑になると思ってかけられなかった』
電話越しの声が、少しずつ近くになっている。気のせいなんかじゃない。だって彼はさっき『また黙っていなくなるのか?』って言った。
背中が熱い。射るような視線を感じる。
「こっち向いて」
スマホからじゃなくて、背後から冬夜さんの声がした。指先が震える。嬉しさと緊張と、あとほんの少しだけ怖さもある。
「む、無理です」
「なんで無理?」
「振り向いたら、本物の冬夜さんがいるんでしょう」
「そうだよ」
「そんなの……心臓が壊れちゃいます」
「壊れてよ、顔が見たい」
そう言いながら、体を後ろに返された。三ヵ月ぶりに冬夜さんと瞳が重なる。やっぱり私の心臓は壊れそうなほど速くなっていた。