あの夜を閉じ込めて


――ブーブー、ブーブー……。

カバンの中で鳴っているスマホ。画面には知らない番号が表示されている。誰だろうと不思議に思いながら、おずおずと電話に出た。


『また黙っていなくなるのか?』

すぐに飛んできた声に、体が固まった。

忘れるはずがない。忘れたことなんてない。

これは、冬夜さんの声……。

「ど、どうして……?」

『バースデーグラスの送り状に番号を書いただろ』

「あ……」

『ずっとかけようと思ってたんだ。でもかけたら迷惑になると思ってかけられなかった』

電話越しの声が、少しずつ近くになっている。気のせいなんかじゃない。だって彼はさっき『また黙っていなくなるのか?』って言った。

背中が熱い。射るような視線を感じる。


「こっち向いて」

スマホからじゃなくて、背後から冬夜さんの声がした。指先が震える。嬉しさと緊張と、あとほんの少しだけ怖さもある。


「む、無理です」

「なんで無理?」

「振り向いたら、本物の冬夜さんがいるんでしょう」

「そうだよ」

「そんなの……心臓が壊れちゃいます」

「壊れてよ、顔が見たい」

そう言いながら、体を後ろに返された。三ヵ月ぶりに冬夜さんと瞳が重なる。やっぱり私の心臓は壊れそうなほど速くなっていた。

< 26 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop