溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
微笑み合いながら、そういうおふたり。


「なにが?」


そう問う先輩。


「……ああ、俺らは政略結婚だったからな」

「と言っても、両想いになれたけどねっ」


ウインクしながらそう言った先輩のお母さん。

そう……だったんだ。


「偽りの、仮面夫婦にはなって欲しくなかったから、ちゃんと好きな人と婚約することができて嬉しいのよ」


にっこり優しく微笑む千星先輩のお母さん。


……ああ、この人たちが千星先輩のご両親でよかったなって……思える。


「……私も、そう言っていただけてとっても嬉しいです……!おふたりのような夫婦になれるように、頑張ります……!」

「あらっ!真白ちゃんが娘になってくれるなら幸せねぇ。たくさんお菓子作りしましょう?」

「!はい!ぜひ!」


やったー!!


「……はいはい、仲良くするのはいいけどもう時間ないから帰るよ」


ぎゅっと先輩に手首を掴まれて引かれていく。


「あっ……ちょ、ちょっと先輩っ……?」


ま、まるでなにかから逃げてるみたいだっ……!!


「あ、またねぇ〜!」


にこにこしているおふたり。


ぺこりと頭を下げて、先輩と共に部屋から出た。


「あ、あのっ……どうしてそんなに急いで——」

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