先輩からの卒業


「何これ」

「覚えてないの?」


覚えてないの?ってことは付き合っていた頃に俺が加恋へプレゼントした物だろうか。

必死に記憶を探るも思い出せない。



「高2の3月頃。巧の友達から渡されたもの」


高2の3月……。

ああ、ホワイトデーのお返しだ。

確か、その時俺は入院中で母さんに用意してもらったんだ。

しかも、友達経由で渡してたから袋の中身まで見ていなかった。

つまり、これが初見。

どうりで見覚えがないはずだ。


「なんで今更そんな物……」


「これ、実はもらった当初は開けなかったの」


「なんで?」


「だって別れた相手からのプレゼントよ?」


俺達はあの事故の数週間後、話し合いの末別れることになった。

だけど、貰いっぱなしは悪いからホワイトデーだけは返すことにしたんだ。



「つい最近、部屋を掃除した時に未開封のまま出てきたの。私、開ける前まで勝手に誕生日プレゼントだと思ってたから、開けずにしまってて」


「加恋の誕生日って?」

「3月15日。知らなかったの?」

自分の誕生日すら知らなかった元カレに呆れたような顔をする加恋。



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