先輩からの卒業



「ごめん……」

友達がそれを渡してくれたのは多分ホワイトデーの前後。

加恋が誕生日プレゼントと間違えてもおかしくはない。

……確かに別れた男からの誕生日プレゼントなんて、どうすればいいかわかんないよな。


「開けたらホワイトデーってシールが貼られたお菓子だったからびっくりしたわ」

「紛らわしくてごめん。けど、なんで今更そんな話……」

さっき俺に渡すためって言ってたけど、わざわざ元カレにホワイトデーのお返しを返品しに来る必要があるか?

高額なものならまだしも、中身は賞味期限の切れたお菓子。



「これ、ホワイトデーのお返しなら私宛じゃないはずよ」

「……え?」

「だって、バレンタインの時は別れ話の最中だったし、私に巧にチョコなんて渡してないもの」

加恋の口から出たのは思いもよらない言葉。


「いや……バレンタインの翌日くれただろ。ピンクの包装紙で赤いリボンの」

確かにバレンタイン当日、加恋からのチョコはなかった。

だけど、事故に会った日俺の鞄にはチョコが入っていたと母さんから聞いた。

『本命っぽかったし多分彼女よ』そんな言葉と共に。



< 41 / 56 >

この作品をシェア

pagetop