ABYSS〜First Love〜
リオ

sideA-4

ユキナリには何か大きな秘密があるんだと思う。

頑なに好きって言わないし、
でもオレを愛してないとは思えなかった。

オレを見るユキナリの目や
触れ合う唇が
何も言わなくてもわかるくらいに熱を持って伝わってきた。

オレは出来るだけユキナリにスキンシップしようとした。

ユキナリだって男だからそういう気持ちにさせれはどうにかなると思ってた。

でもユキナリを堕とすまえに自分がユキナリに溺れてしまう。

「リオ、ダメだって。
本当にお前を愛してくれる人と付き合って
大事にしてもらえ。」

ユキナリだってオレを愛してるだろ?

そう思ったけど口には出せなかった。

否定されるのがわかってたから。

最近のオレはこの想いをどうやって消したら良いのか考えている。

どんなに愛したってユキナリはきっと手に入らない。

それがわかったから側にいるのはしんどかった。

でもあと3日でユキナリとの恋は終わる。

終わらせなきゃいけなかった。

アキラさんが遊びに来て
ユキナリは不機嫌になった。

オレとの仲を疑ってるんだろう。

ヤキモチを妬いてるってユキナリは自覚してるんだろうか?

でもオレとアキラさんとは兄弟みたいで
そんな気持ちは全くなかった。

オレはアキラさんにだけ自分の気持ちを素直に話して相談している。

「もうユキナリはやめたら?」

アキラさんは簡単にそう言うけど
逆にそれは「そう簡単には諦められないだろ?」と言われてる感じがした。

「耐えられないなら手放した方がいい。

じゃないとお前が壊れちゃうよ。」

オレだってしんどくて諦めたい。

でももう引き返せないほど
オレはユキナリを愛してた。

アキラさんはそんなオレを見てるのが辛いと言った。

オウスケさんを想う自分の姿と被るからだ。

「リオ…オレがお前を愛してやろうか?」

アキラさんはオウスケさんと別れて
寂しいんだろうけど
オレはアキラさんと慰め合う仲になんかなりたくない。

アキラさんにだって幸せになって欲しかった。

「アキラさん、オウスケさんに本当の事言ったら?

別れたくないって言ったらオウスケさんはきっと戻ってくれる。」

「だから嫌なんだ。

同情みたいに愛されたって傷つくだけだよ。

オウスケさんは自分からは絶対に行動しないだろ?

何かを抱えてるんだろうが決して自分の感情を表には出さない。

あの人は来るものは拒まず去るものは追わないんだ。

オレはそれがしんどくてあの人から離れたんだ。

だからリオにはそういう男を好きになって欲しくない。」

別れる前の2人は喧嘩してたというより
アキラさんが一方的に怒ってた感じだった。

ただ別れた後、オウスケさんはアキラさんが作ったヒンメリを全て捨ててしまったとユキナリから聞いた。

オウスケさんだってアキラさんのことで感情的になる程好きだった筈だ。

きっと無理をしてアキラさんを手放してあげたんだと思う。

ユキナリはオウスケさんに似ている。

絶対に本当の自分を誰にも見せたりしない。

だからよくわからない。

ある程度は推測出来たとしても
人の気持ちの深いところはその人にしか理解できない。

オレのユキナリへの気持ちも
ユキナリのオレへの気持ちも
きっと誰にも理解することもされることもない。

その夜、ユキナリは何かを決めていた。

それは多分オレにとって辛い選択であろうことはわかっていた。

そしてユキナリ自身もきっととても辛い事なんだろう。





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