雨降る日のキセキ

――7年前


ザーザー雨が降る夕刻。


「千隼!こんなところで何してるんだ?風邪引くから帰ろう」


母親に目障りだと家を追い出され、行く宛もなくブラブラしていたところ、兄貴と遭遇した。


「兄貴こそ、傘どうしたの」


「仲良い女の子に貸しちゃったんだ。またいつか会ったときに返してもらうつもり」


自分がズブ濡れになるのに女の子に傘を貸す。


兄貴のそういうところが嫌いだ。


本当に嫌味のない優しい人だからこそ、俺は敵うわけもなくて、腹が立つ。


兄貴さえいなければ俺の人生はもっと明るいものだったのに。


「最近、野球どう?順調?」


どんな神経で聞いてくるんだろう。


兄貴のせいで嫌な思いをしているというのに。


「うるせーな。兄貴には関係ないだろ」
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