◇水嶺のフィラメント◇
『レイン……』

 やがて真下の一番光が集まる場所に、柔らかな面立ちをしたレインが眠っていた。

 身を沈めた時と同じく白いシャツと焦げ茶色のスラックスを纏っている。

 サンディブロンドの肩に掛かる髪は光を吸い込んだようにキラキラと輝いて、やはり何度も見た絵画の天使みたいだとアンは思った。

『アン……どうして?』

 やがてレインは(まぶた)を開き、真上まで近付いたアンに問い掛けた。

『貴方を独りにしないと、決めたからよ』

 レインはその言葉に哀しい眼差しを見せる。けれどアンは微笑みを絶やさなかった。

『心配しないで、ちゃんとみんなの元へ帰るわ。でもこれから毎日朝と夕、あたしは此処へ来ると決めたの。貴方に会いに、貴方と共に神さまに祈るために』

『神に……?』

『あなたと一緒に、此処で「風を継承」するのよ』

 アンはとうとう辿り着いて、レインも身を起こし二人は向かい合った。

『いや、でも君は、いつか王妃にならなくては……』


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