クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
彼は着ていたものを脱ぎ捨てると私の上に跨ってきた。

「美波」

名前を呼ばれ、彼を見上げると熱を帯びた顔をしていた。
その顔を見て思わず両手を広げた。
すると彼は私の体に重なり、肌と肌が直接触れ合う。彼の汗ばんだ肌がこれはリアルなのだと実感させる。
彼に翻弄され、どれだけの時間ここで過ごしたのだろう。
私は気が付くとベッドにいた。
ベッドと言っても私のではない。 
掃除の時に入る彼の部屋のベッドだ。
ふと横を向くと彼は裸で眠っていた。
私は彼の着ていたTシャツを着ていた。きっと移動する時に着せてくれたのだろう。

彼の綺麗な顔を眺めながら涙がポロポロとこぼれ落ちてきた。

離婚、出来なかったな……。
その代わりに彼の妻としての役目を再確認させられた。
家事をすることやパーティーに出ることが役割かと思っていた。こんな役割もあったのだと胸が苦しくなった。
肌を重ねることも役目だと思っても見なかったが、まだ若い彼には必要なことだろう。
妻ができてしまい外でできなくなってしまったのだから。

でも私は、彼に求められて嬉しかった。
たとえ役目だと言われても彼と体を重ね、より身近に感じられて嬉しかった。
昨晩彼の引き締まった体に抱かれたことを思い出すだけで顔が火照る。

私はそっと彼のベッドを抜け出すとリビングへ行った。
夕飯がそのまま残されており、ソファの周りには私と彼の服が散乱していた。
その様子を見て恥ずかしくなり、私は洋服を集めると洗濯機の中へ放り込んだ。
食器を洗い、ようやく片付いたところで彼が部屋から出てきた。
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