こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
そして、二十年後、タンポポのように笑う女の子はまたケイの前に現れた。
ケイのことを全く覚えておらず、それどころか、一緒に働き始めて一年も経つのに、ケイの名前すら知らない。
ほとほと呆れるが、そんなのんびりした小春がケイは好きなのだ。
「コハルノ食堂でーす」
今日も小春はお弁当の配達にきてくれる。週三回の楽しみだ。
昼食はササッと食べて作業に戻りたい。
だから、作業場で食べたいのに、サラは食べに来いと言う。
サラがいない日はテイクアウトというのは、前からの習慣だ。
小春が給食室カフェで働くようになって、初めはケイもテイクアウトしに行っていた。
でも、給食室に買いに行くと、小春は厨房にいるので話すことができない。
手を振ってくれるだけだ。
それがケイには残念だったし、源基がいるとやたらと睨んでくるので居心地も悪い。
だから、小春が配達してくれるようになって内心喜んだ。
もちろんそんなケイの事情を小春が知る由もなく、ケイを心配してくれる優しさにつけ込んでる気がして、後ろめたさはあったけれど。
「今日はロールキャベツですよ」
ニコニコと微笑む小春が可愛い。
砂場でおだんごを作っていた時と変わらない笑顔を見ていると、ホッとする。
「キミが料理の道に進むきっかけになった『おにぎりを作ってみたら?』っていうのは俺が言ったんだよ」
とはまだ言えずにいる。そうと知ったら小春はびっくりするだろうか。
「今度おにぎりが食べたいんだけど」
「おにぎり?」
「うん」
ケイはロールキャベツを食べながらお願いしてみた。
「おにぎり定食っていうのも面白いかも」
斜め上の方向を見ながら小春はうーんと考える。
期待を込めてじっと小春を見ていると、「わかりました。今度作ってみますね」という返事が返ってきた。
どうやら話す機会が訪れそうだ。
「楽しみにしてる」
ケイは小春の頭をポンポンと撫でた。