カタワレのさくら
入学式。

高校の門前で固まる私。



目の前の校舎がまるで、王族が住んでいるお城のように見えた。後一歩が踏み出せない――なかなか勇者になれない私を、くすくす笑いながら通り過ぎていく制服を纏った勇者たち。




もう、帰りたい……。

周りの視線が深く、突き刺さる。




恐怖で動けなかったそんな私の手を、誰かの手が触れる。


そっと振り返れば、もう大丈夫と笑いかけてくれた。


「俺がいるから、大丈夫ださくら」

「え? なんで名前……」

「覚えてないの、毎日会ってたのに」

「会って、た……?」

「花が咲くは君と邂逅を果たすがため」


あ……桜色の瞳。


ざわざわと心の中に降る花びら。そして、浮かぶ情景。


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