遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 固くて融通は効かなそうだけれど、鷹條はとても優しい人だ。

 公僕って公務員のことよね?公務員ってお礼を受け取ることもできないんだっけ?

 公的な立場であればそれもそうなのかもしれないなと部屋着に着替えた亜由美はシャワーを浴びて、リビングでくつろぐために、ソファに腰掛けテレビをつけた。

 国会が非常に紛糾したものの、今日予算案が可決された……と言うニュースがやっていて、それ自体には大した興味はひかれなかった。

 亜由美が、ん?と釘付けになったのはその画面だ。
 た……鷹條さんっ⁉︎

 先ほど別れたばかりだ。少し前までずっとそばについていてくれた。
 その姿を見間違うはずはない。

 議場から出てくる大臣の一人を警護して真後ろに着いている鷹條の姿がテレビにしっかり映っていたのだ。

 じっと目を凝らすとちらりとSPバッジが見えた。
 SPだったの⁉︎

 それは身元を明かしたくないわけだ。
 なんとなくそれは亜由美にも察しがつく。

 ペラペラと周りに吹聴するようなことではないだろう。ましてや、初めて会った人になんて特に。
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