遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 雲の上の人だわ……。
 要人警護を行うSPは高い警護技術が求められ、警察官の中でも誰でもなれるものではないと以前テレビで見た。

 SPとしての条件や適性を認められ上司の推薦も必要で、特殊な訓練を受けても全員がSPになれるわけではない、とその番組では言っていたのだ。

 警察官の中でもエリート中のエリートがSPなのだと。

 そんな立場だから、亜由美にも優しくしてくれたのだし、頑なにお礼を拒むわけだ。

 むしろ、そんな人がたまたま通りかかって助けてくれたことこそがラッキーなことだったのだ。

「そっか……」
 素敵だと思っても、手が届くような人ではなかったのだ。

 そう思うと、また少しだけ泣きそうな心地になった亜由美なのだった。

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