遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
7.好きな人
「鷹條さん、好きな子って私なんですか?」

「何度も言わせないでくれ。本当にそういうタイプじゃないんだ俺は。そうだよ。君は目を離せない。すぐに俺の目の前でトラブルを起こすし、なのにいつもキリリとして見えて。内心は不安だったり泣きそうだったりするくせにそれを他人には見せない」

 鷹條は照れたような表情なのに、その真っ直ぐな気持ちが伝わってきて、亜由美の鼓動が大きくなって、顔が熱くなってくる。

 亜由美の外見だけではなくて、鷹條はその内面まで見てくれていた。
 それがとても嬉しい。

 こんな風に言ってくれるのは鷹條だけだ。
「私も好きです……。だって、そんな風に言ってくれるのは鷹條さんだけだし、いつも助けてくれて、スーパーマンみたいな人です」

「参ったな……」
 亜由美はとても綺麗だ。

 緩く巻いた長い髪も、焦茶色の瞳も、その瞳を縁取る長いまつ毛も。

 鷹條が亜由美に惹かれることはあっても、亜由美が鷹條に好きだと言ってくれることは想定していなかったのだ。

 だから、そんな風に亜由美に言われて、鷹條は言葉を返せなくなってしまった。

 それに亜由美はとても素直に褒めてくれる。
──だから好ましく思うんだ。

「俺は仕事の時間も不規則だし、メールとかすぐ返せないことも多い。つまんなくて無愛想なんだが、こんな俺でも付き合ってくれるか?」
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