十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
「ピッタリだ……」

父親は、「もう枯れた」と言ってしばらく見せなかった涙を見せてくれた。

「これで、母さんにあっちで怒られない」
「お母さんは怒るってキャラじゃないでしょう」
「いや、ああ見えて母さんは怖かったんだ。……理玖くん」
「はい」
「君なら分かるんじゃないか?美空は母さんによく似ているから」
「否定はしません」
「否定しろ!」

父親は何度も理玖に直してもらった指輪を触りながら

「懐かしい。本当に。あの頃はこの指輪があるだけで母さんと一生一緒にいられる気になっていたよ」

その言葉の意味には、母親が病気ですぐに死んでしまったことが含まれているのだろう。

「理玖くん」
「はい」
「君は……いい仕事に就いたね。思い出を紡ぎ、残し、繋げる……。君のおかげで、私は再びあの日に戻れた気がしたよ」
「美空さんのおかげです」

理玖は、私の肩を抱く手に力を込めてきた。

「美空さんは俺の人生そのものです。その指輪に誓います。お義父さん。どうかこの先、俺に美空さんを守る権利をください」

父親は、理玖のもう片方の手をしっかり握ってから、また涙を溢れさせながら

「ありがとう。私は、最後に君に会えて幸せだ。美空を……よろしく」
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