俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
春多くんのシャツの裾をつんっと引っ張った。
じっと顔を見つめていると、この子も私の意図に気付いたみたいで、コホンとわざとらしく咳払いしてからもどかしそうな表情をみせる。
「しないよ」
「……え?」
「あんたに魅力がないからじゃなくて、妊娠初期はよくないだろ?子宮収縮はお腹のはりにも繋がるし。さすがに安定期入らないと危ないから」
「あー、……そ、そうだよね。ははっ」
そうなの?知らなかった!
妊娠中でも気を付ければしていいと思ってたけど、時期によって違うんだ!?
「俺だって、隣にあんた寝てんのに全く平気な訳じゃないからさ。あんま挑発すんなよ」
わ、意地悪な笑顔。目を細めて口元をニヤーとさせるから、きっと私が知ったかぶりしたのバレてるんだろうな。
お腹の子のママになるのに、なんにも知らないことが恥ずかしい。
「さっき言ってたプレママが、香川の奥さんだったって話は?」
「……あ、うん。奥さん、私のこと分かってたみたい」
「そっか、まぁそれは仕方ねーな。何か言われても俺の子供で通せよ?香川との関係認めると色々とややこしくなるからな」
春多くんが、私の事を心配して、私の体も大切に思ってくれてる事は十分に伝わってくる。
でも、時々──。
春多くんが何を考えてるのか不安になるのは、どうしてだろう。