俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~



「俺、やっぱ病院戻るからさ。あんたはゆっくり休んでて。あ、もうアイツ来ないと思うけど、玄関ロックもかけといて。遅くなる時は連絡入れるから」


そっと額に春多くんの柔らかい唇が押し当てられる。でも、すぐに離れるから甘さより寂しさが強く残った。




***




「ほら、あれあれ。あの人だよー。昨日倒れた妊婦」

「院長の孫と付き合ってるって?」

「子供が出来て結婚したらしいよー」

「院長の孫ってまだ学生だったよね?」

「名字は?河本になるのかな?」



「えーーー、それってそれって玉の輿じゃん。将来は院長夫人とか羨まし過ぎる!!」



次の日。職場に行くと、物凄い勢いで噂話が広まっていた。
違う病棟の知らない職員さんにも好奇な目で見られ、ヒソヒソ話をされてるのが分かる。

気のせいか、同じ病棟の同僚達でさえ私を見る目がいつもと違う。
ただ、1人を除いては……。



「鴨ちゃん、体調どう?今日出勤しちゃって大丈夫なの?」

「ま、真木ちゃん……。ありがとう。うん。昨日、病院行って貧血の薬も貰ってきたから平気」

「でもさぁ、春多くんもやるよねぇ。鴨ちゃんラブだよねぇ!」

「……?」

「昨日、鴨ちゃんが倒れた時さぁ。走ってきてお姫様抱っこして、お腹の子供は俺の子だからーって宣言してめっちゃ格好良かったよー!」

「えっ、嘘?」


お、覚えてない。お姫様抱っこなんかされたんだ。
嬉しいけど、でも、お願いだから真木ちゃん声のボリューム下げて!!

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