俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
ミチさんが紅茶を持って戻ってきたところで、勢いよく立ち上がり頭を深く下げた。
「え?珠里さん突然どうしたの?」
「わ、私ミチさんに酷いことをしました!本当にごめんなさい……」
彼女が何も聞いてこないから、何から話していいか分からないけど。私が悪いのは事実で、声が震えてどんどん小さくなっていく。
カタン。隣に座っていた筈の春多くんが立ち上がって、私の背中にポンと手を当てるから、その温かさに涙が込み上がりそうになった。
「どうして、謝るのかしら?」
「わ、私は、以前……ミチさんの旦那さんと不倫関係にありました」
泣いちゃ駄目だ。顔を上げてミチさんに真っ直ぐ視線を向けると、顔色1つ変えない彼女の姿があった。
「あら、不倫関係って、どこまでしたのかしら?体の関係を持ったって事かしら?」
「……はい」
「何処で、隠れて逢引していたの?」
「彼の……名義で借りているアパートです」
「ふふっ、そうなの。そうだったのね。帰りが遅いことが増えていたけれど、珠里さんと会っていたんですね。あなたは知っていたんでしょう?妻がいる男の人だって」
「……はい。申し訳ありません」
静かな部屋に自身の声が震える。
落ち着いた様子の彼女が、私の懺悔をどう受け取るか分からない。
「夫との不倫行為を認めるってことは、慰謝料を支払ってくださるのかしら?妻がいる相手と性的関係にあった場合、相場として……そうねぇ、300万は頂かないと見合いませんけど」