白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
4 + Side of Haruma +



 中学校の卒業式で、俺はフーカに告白しようと思っていた。けれど、彼女には先客がいた。

「ごめんなさい」

 聞き慣れた彼女の声に、俺の足が止まる。

「……だから」

 ちいさな囁き声を拾い上げることはできなかった。
 
 これから三年間全寮制の競馬学校に進む俺から告白されたところで、きっと迷惑だろうとは思ったけれど、気持ちだけでも伝えておきたいと、意を決して彼女の教室まで足を運んだ。それなのに、俺の決意を嘲笑うかのように、彼女は別の男から告白されていた。そして彼はあっさり振られた。この場にいたのが俺だったとしても、結果は同じだったかもしれない。
 フーカと同じクラスの生徒だったのだろう、気まずそうに教室から出て行った彼は俺の姿を見て、どこか諦めたような表情をしていた。俺が彼女の幼馴染であることを知っているのか、視線が一瞬だけ絡んだが、何事もなく過ぎ去っていく。
 俺が教室の前で立ち尽くしているのを見つけたのか、フーカが「あれ」と頓狂な声をあげる。

「ハルマ、どうかしたの?」
「フーカ」
「珍しいね、あたしの教室まで来るなんて」
「そりゃ、今日で最後だからな」

 一緒に帰らないか、と誘えば屈託のない笑顔を見せる。

「うん!」

 先ほどまでの告白されて戸惑いの表情を浮かべていた彼女からは考えられない、明るい向日葵の花のような笑顔だった。
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