白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
* * *
「馬が見たい」というフーカの一声で俺は彼女と久々に馬事公苑に立ち寄ることにした。
卒業式の荷物はそれぞれの両親に持たせて、制服姿のまま厩舎へ向かう。ずっと乗りつづけているシオノワタリが俺の顔を見て嬉しそうに鼻を鳴らす。フーカがそれを見てクスリと笑う。
「相変わらず馬には好かれているのね」
「馬にはってなんだよ失礼だな」
「ううん。ハルマはそのままでいいよ」
そのままでいい、と言いながらフーカは俺にぽつりと告げる。
「告白されちゃった」
「そうか」
「ハルマがすきだから断った」
「そっか……って!?」
さきほどの光景を思い出して俺は凍りつく。
たしかに卒業式が終わった教室でフーカに告白していたクラスメイトは俺を見て諦めた顔をしていた。あれは、俺が彼女の幼馴染で想い人であると悟ったことによる諦観だったのだろう。
「ほんとうは言わないつもりだったけど。中学卒業したら、ハルマとこんな風にしょっちゅう逢うこともできなくなるじゃない。馬に夢中になってあたしのこと忘れてもいいけど、あたしはハルマのことずっとずっと応援してるからね」
「フーカ」