白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
 自分から気持ちを伝えようと思っていたのに、フーカに先を越されてしまった。彼女は自己満足だよ笑って、俺からの返事を聞く前に背中を向けてしまった。慌てて彼女の腕をつかんで自分の胸元へ引き寄せる。まさか引き留められると思わなかったのか、フーカが涙を湛えた赤い目でこちらを睨みつけてくる。

「っ!?」
「返事くらいきけよ。言い逃げなんかさせない」
「わかってるもん。振られるって」
「振らねぇよ」

 泣き出しそうなフーカをぎゅっと抱きしめて、俺は「すきだよ」と小声で返す。「うそ」と言いたそうな彼女の顎をひょいとつまんで、唇をそっと重ねれば「――ばかッ」と弱々しい罵り声。

「三年後、プロ騎手になったらお前を迎えに行ってやる。それくらいは本気だ」
「ほんとうに?」
「だから浮気なんかすんじゃねーぞ」
「それはこっちの台詞……って、シオノワタリに見られてるっ」
「あいつは俺がフーカのことすきなの知ってるからいいんだよ」

 ブヒィイン、と鼻息を荒くして白い馬が俺たちを呆れたように見つめている。
 俺のことをよく知る馬の前で気持ちを伝えあった俺とフーカは、三年後の再会を誓って、この場を後にしたのだった。
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