白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
 あたしも地元を飛び出し、彼が所属する厩舎からほど近い場所にある女子大で管理栄養士になるための勉強を始めた。
 彼は迎えに行くと言っていたけれど、あたしの方から逢いに行ったと言っても過言ではない。
 あたしたちの恋路を見守ってくれているお節介なショーマお兄ちゃんがいたから、三年間の遠距離恋愛も無事に乗り越えられたんだと思う。
 高校時代のあたしは周囲から食べることと競馬新聞に夢中な変な奴だと思われていたみたいだけど、むしろ好都合だった。部活は調理部で、顧問の先生には調理師を目指すのかと勘違いされたほどに腕を磨いた。調理師になってハルマのお抱えシェフになるのも楽しそうだなと思ったけれど、そうしたら彼を太らせてしまいそうだなと初心に戻って勉強したものだ。

 ――まさか迎えに行く、がプロポーズの言葉だとは思わなかったけど。

 再会したハルマに栄養士になって、彼の生活を支えたいと伝えたら、彼は「嬉しい、結婚しよ」と言い出した。
 結婚なんてまだ先のはなしだと思っていたのに、ハルマはしきりと結婚を匂わせる。
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